大会長挨拶

PASセルフケアセラピィ看護学会 第3回大会

大会長 國府 浩子

熊本大学大学院生命科学研究部 教授

 このたびのCOVID-19の感染によりお亡くなりになられた皆様に哀悼の意を表します。現在も闘病中の患者様、ご対応されている関係者すべての皆様に心よりお見舞い申し上げます。現在、多くの皆様が、感染拡大防止・事態の改善に向けて、心身の緊張が続くなか、ご努力を続けていらっしゃると拝察いたします。

 このたび、PASセルフケアセラピィ看護学会第3回大会を2020年9月6日(日)大阪あべのハルカスで開催させていただく予定でしたが、通常の会場開催は困難と考え、Web開催とさせていただくことになりました。

 今回のテーマは『セルフケア支援の発展―事例がもたらす知の構築と介入型事例報告・事例研究―』といたしました。

 

 慢性疾患を主体とする疾病構造の変化、超高齢化社会、昨今の医療状況のもと、看護者には、多様化している患者の価値観や生き方を理解し、患者が自分自身で病気のある生活をマネジメントする力を身につけられるように知識・技術を提供するとともに、様々な役割をもった生活者として主体的に生きられるように援助する役割が期待されています。

 ドロセア・E・オレムは、「セルフケア」を「個人が生命、健康、および安寧を維持するために自分自身で開始し、遂行する諸活動の実践である」と定義しています。安寧(well-being)という言葉が表すように、自分らしく生活することを含めてのセルフケアといえるのでしょう。そのため、その人の主体性や意思決定を支える支援が大きな意味を持つと思われます。

 

 患者の価値観や生き方が多様化している現在においては、看護の重要な機能であるセルフケアへの支援を、実践的・学術的に発展させていくためには、一つ一つの事例を大切に分析していくことが重要となってきます。事例研究は、実践家のリフレクションを促進し、卓越した看護実践の暗黙知を明らかにするだけでなく、実践知として集積・体系化されることにより看護の技を次世代へ継承するという有用性・貴重性をもっていると言われています。

 「個別性」を徹底的に検討することを通して普遍性を追求するというアプローチにその本質があり、複雑かつ多様な状態の中で、事象の個別性を大切にし、それが起きる状況ごと包括的に切り取って吟味することから新たな知を構築していきます。日々の実践で経験した事例報告を積み重ね、事例報告をもとに仮説を立てて介入を行い、その評価を行うことで、患者の特徴と特徴に応じた看護介入技法が明確になると思われます。これは、本学会の大きな目的であり、今、私たちに求められていることと感じています。

 事例報告・事例研究は、看護の中では、自分の実践を振り返る貴重な報告・研究ですが、この学会・大会では、事例報告・事例研究を、実際に実践しながら成果をあげていく「介入型事例報告・事例研究」として新しい形式、まとめ方を提案しています。これは精神医学の研究の中で用いられていた方法ですが、事例報告や事例研究が、研究業績の数としてカウントされにくい、原著論文になりにくいことからその数は減ってきました。

 しかし本学会・大会では、事例報告・事例研究を生きた研究として扱い、さらに自分たちの看護実践能力の発展のために用いていきます!

 

 今回の大会では、セルフケア支援について、介入型事例報告と介入型事例研究とその意義、方法論について語り合える場になることを願っています。そのような場を作り上げるためにも、多くの皆様のご参加を心からお待ちしております。

 学会のWeb開催では、事前登録が必要となりますので、参加を希望する皆様方には、参加登録をお願いいたします。

 一刻も早く感染症が終息し、皆様に平穏な日常が戻ってくることを祈念しています。